離婚問題の解決事例

2017年4月25日 火曜日

逆転勝訴。。。子の引き渡しに関して

2012年11月に頂いた、逆転勝訴のケースを紹介します(当時アメブロに掲載した記事ですが、未だに良く検索していただく方が多く、需要があるかと思い、こちらでも掲載します。)。

これは、子どもの引渡の審判前の保全処分に関するものです。

事例は、夫のモラハラに耐えられず、未就学児の子ども2人を連れて、妻が行く先も告げずに家出をした事案です。私は妻側の代理人です。

夫側は、妻が家を出て行くや、警察に捜索願を出し、行方を突き止め、それと同時に子の引渡の審判と保全処分を実に良いタイミングで申し立ててきました。

家裁の調査官が入り、家庭訪問などをし、現況妻側に問題行動があるわけではないし、子ども達も落ち着いているとはいえ、行き先も告げずに子ども達を連れて行方をくらましたのは、違法な連れ出し行為で、現況がいかに落ち着いているとはいえ、その状態を追認することはできない、とのことで、調査官の意見書では、申立を認容し、子ども達を夫に引き渡すべし、と書かれ、裁判所もこれを追認する形で審判が下されました。

これはどう考えても納得がいかない。既に妻が子ども達を連れ出してから半年も経っており、しかも、子ども達は未就学児。ママがいないとどうしようもないような年齢。ここで裁判所が無理やり引渡の強制執行をしたら、確実に子ども達はトラウマになるし、その責任が取れるのか?今は、実家の援助も得られ、精神的にも経済的にも安定した生活を送っているのに、それを強制的に国家権力でひっくり返すのか?と責め立て、即時抗告を行いました。

通常、即時抗告を行ってから3ヶ月くらい結論がでるまでかかるのですが、高裁からは2回に亘って「審判の期日を早めます。」との連絡があり、それが何を意味するのか分からず、依頼者とともに不安な毎日でしたが、昨日、

「原審判を取り消す。相手方の本件申立てを却下する。」

との決定が届きました。

相手方は特別抗告をする以外に方法はなく、これが認められることはまずあり得ないですので、この件についてはこちら側の勝ちということになります。

この決定をくだした高裁の裁判長は、園尾判事という、とても有名な裁判官でした。庶民感覚に優れた裁判官で、良い判事に当たって心底良かったと胸をなで下ろしました。

早速依頼者に伝え、共に喜んだのは申し上げるまでもありません。子ども達にも何度かあって、手品を見せて喜んでもらったりしていたので、お母さんのもとにいられることになって心底良かったと、久しぶりに胸が熱くなった一時でした。

決定の規範部分については、同じ実務家の先生方にも参考になるかと思いますので、項を改めて書くこととします。

規範部分です。

「審判前の保全処分としての子の引渡命令は、仮の地位を定める仮処分に準じた命令であるから、著しい損害又は急迫の危険を避けるために必要とするときに限り発することができるものである(家事審判法15条の3第7項において準用する民事保全法23条2項、家事事件手続法115条)。

しかも、審判前の保全処分としての子の引渡命令が発せられると、強制執行が可能となり(家事審判法15条の3第6項において準用する民事保全法43条及び52条、家事事件手続法109条3項)、未成年者に大きな精神的緊張と精神的苦痛を与える可能性が生じる上、後の裁判において審判前の保全処分と異なる判断がされる場合には、複数回にわたって未成年者に精神的苦痛を与えることになる。

夫婦間の離婚をめぐる紛争が離婚訴訟の判決の確定によって終局するまでの間には、このように数次の裁判が積み重ねられる可能性があるが、その中で異なった判断がされた場合に、そのつど未成年者の引渡しの強制執行がされるときは、未成年者に対して著しく大きな精神的緊張と精神的苦痛を与えることになり、このこと自体が未成年者の福祉に反することになる。

したがって、審判前の保全処分により未成年者の引渡しを命じる場合は、後の処分によりこれとは異なる判断がされて複数回未成年者の引渡しの強制執行がされるという自体を可能な限り回避するような慎重な配慮をすることが必要である。

加えて、審判は非訟手続であり、口頭弁論制度と三審制の中で審理される訴訟手続とは異なり、事案に応じて柔軟に審理し、即時抗告審の裁判により迅速に権利関係の確定が図られることも考慮する必要がある。

審判前の保全処分としての子の引渡命令についての以上の法的性質及び手続構造からすれば、審判前の保全処分として未成年者の引渡を命じる場合には、監護者が未成年者を監護するに至った原因が強制的な奪取又はそれに準じたものであるかどうか、虐待の防止、生育環境の急激な悪化の回避、その他の未成年者の福祉のために未成年者の引渡しを命じることが必要であるかどうか、及び本案の審判の確定を待つことによって未成年者の福祉に反する事態を招くおそれがあるといえるかどうかについて審理し、これらの事情と未成年者をめぐるその他の事情とを総合的に検討した上で、審判前の保全処分により未成年者について引渡しの強制執行がされてもやむを得ないと考えられるような必要性があることを要するものというべきである。」

実に見事な判決文です。

相手がDVだ、モラハラだ、という被害の下、夫に黙って子どもを連れて出て行くケースは、よくあります。

もし、原審のような保全処分が通ってしまうのであれば、殆どのケースで、子どもを連れて逃げた奥さんから、子どもを取り上げることが容易な話になってしまい、逃げることすらできなくなってしまいかねませんでした。

DVだ、モラハラだというのは、なかなか証明も難しく、また、このような傾向にある方は、子の引渡の保全処分が認められるケースがあるとの知識を得れば、間違いなくやってくるものと思われます。そうした場合、逃げた方は、ますます窮地に追い込まれます。全く救われません。

その意味では、そういうケースに対して、防御の道を明確に作ったということができるのではないでしょうか。とても有意義な高裁判決だと思います。

是非、参考にしてみてください。

投稿者 銀座ウィザード法律事務所

カレンダー

2018年11月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

月別アーカイブ

お問い合わせ 詳しくはこちら